相続した空き家を売ると、売却益に対して譲渡所得税がかかります。ただし、要件を満たせば「相続した空き家の3,000万円特別控除」で税金がゼロになることも多く、使えるかどうかで手取りが数百万円変わります。この記事では、空き家売却の税金の計算方法、3,000万円控除の要件と2024年改正、取得費加算との使い分け、確定申告の手順を解説します。
先に結論
- 税金がかかるのは「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」のプラス部分だけです
- 税率は所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%で、相続した家は親の所有期間を引き継げます
- 昭和56年5月31日以前に建った家を相続し、相続から3年目の年末までに売れば、3,000万円控除が使える可能性があります
- 2024年からは、売った後に買主が耐震改修や取り壊しをする場合も控除の対象になりました
- 控除の適用期限は2027年12月31日までの売却で、確定申告が必須です
第1部:空き家を売ったときの税金のしくみ
不動産を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に所得税と住民税がかかります。計算式は次のとおりです。
譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。
取得費は、親がその家を買ったときの代金や建築費から建物の減価償却分を差し引いた金額です。相続した家では親の取得費をそのまま引き継ぎます。購入時の契約書が見つからず取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使いますが、この場合は売却価格のほぼ95%が利益とみなされ、税額が大きくなります。古い契約書や領収書は必ず探してください。
譲渡費用は、仲介手数料、印紙税、測量費、売るために行った解体費用などです。
税率は所有期間で変わります
売却した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として20.315%(所得税15.315%+住民税5%)、5年以下なら短期譲渡所得として39.63%です。相続した家は被相続人(親)が取得した日から数えるので、親が長く住んでいた実家はほぼ長期譲渡になります。
第2部:相続した空き家の3,000万円特別控除とは
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、相続した実家を売ったときの譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度です。譲渡所得が3,000万円以下なら税金はかかりません。
主な要件は次のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(区分所有のマンションは対象外)
- 相続開始の直前に、亡くなった方が一人で住んでいたこと(老人ホーム入所中などの場合は一定の要件で認められます)
- 相続から売却まで、事業や貸付け、居住に使っていないこと
- 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却価格が1億円以下であること
- 親子や夫婦など特別な関係の相手への売却でないこと
建物をどうするかによって、対象となる売り方は3つあります。
- 家屋を取り壊して更地で売る
- 家屋に耐震改修をして、耐震基準を満たした状態で売る
- 家屋付きで売り、買主が売却の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しをする
3番目は2024年1月1日以降の売却から認められた方法で、売主が解体費用を先に負担しなくてよくなりました。買主が期限内に工事をしたことの証明書類が必要になるため、契約書に工事の時期と証明の提出を盛り込んでおくことが重要です。
控除額の注意点
2024年以降は、相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり2,000万円になります。また、この控除は相続人ごとに使えるので、兄弟2人で相続して売った場合はそれぞれ3,000万円まで控除できます。
適用期限は2027年12月31日までの売却です。

第3部:取得費加算の特例との使い分け
相続税を納めた方は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)」も検討できます。相続税の申告期限から3年以内に売れば、その不動産にかかった相続税額を取得費に加算でき、譲渡所得を減らせます。
ただし、3,000万円特別控除と取得費加算は同じ物件で併用できず、どちらかを選びます。相続税を多く払った方や、譲渡所得が3,000万円を大きく超える方以外は、3,000万円控除の方が有利になることが多いです。どちらが得かは、売却価格、取得費、納めた相続税額で決まるので、売る前に税理士と試算することをおすすめします。
第4部:確定申告の流れと必要書類
3,000万円控除は、売却した年の翌年の確定申告(例年2月16日〜3月15日)で申告して初めて適用されます。税額がゼロでも申告は必要です。
主な添付書類は次のとおりです。
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書の写し
- 登記事項証明書(建築年月日と相続による取得が分かるもの)
- 市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」
- 取り壊した場合は取り壊し後の閉鎖事項証明書、耐震改修した場合は耐震基準適合証明書など
- 買主が工事をする場合は、工事完了を証する書類
「被相続人居住用家屋等確認書」は、物件のある市区町村に申請して取得します。電気・ガスの閉栓証明や、亡くなった方の住民票の除票などが必要で、取得に数週間かかることがあるため、売却が決まったら早めに準備しましょう。
第5部:売却前に確認したいこと
- 相続登記が済んでいるか(2024年4月から義務化され、登記しないと売却できません)
- 親の購入時の契約書や領収書が残っているか(取得費の証明)
- 建物の建築年月日が昭和56年5月31日以前か(登記事項証明書で確認)
- 相続開始からの経過年数と、控除の期限
- 相続人が複数の場合、誰の名義で売り、控除をどう使うか
- 売却後の手取り額と、翌年の住民税・国民健康保険料への影響
まとめ
相続した空き家の売却では、譲渡所得の計算と3,000万円特別控除の適用可否で、手取りが大きく変わります。昭和56年5月31日以前の家を相続した方は、相続から3年目の年末までに、要件を満たす形で売ることが最大のポイントです。2024年の改正で買主側の解体や耐震改修も対象になったため、建物付きのまま早く売る選択肢も取りやすくなりました。当社では、買取と仲介の両方で、控除の要件を満たすスケジュールと契約条件をご提案しています。
